2012年09月12日
4.「借金からの脱出」借金解決請負人-ペーター・ツヴィーガート1
ドイツのテレビ局は、145以上登録があると言われています。そういえば、単にテレビをつけてチャンネルを変えていくと、一番最初に見た番組にもどるまでにずいぶんボタンを押し続けていないとなりません。145局からは随分と減ってしまいますが、実質30とか40ぐらいチャンネルがあるでしょうか。その中にRTL(エアテーエル)というテレビ局があります。このテレビ局は国営放送ではなく私営の会社で、日本でいうと日テレとかフジテレビとかTBSの部類でしょう。RTLは国営をのぞく私営のテレビ局としては、ProSieben、Sat.1とならび、ドイツで一番大きな局の一つです。
このRTLの番組はニュースからバラエティー、スポーツ番組といろいろとあるのですが、中でもこの局がお得意とするのが、実際の私生活や仕事上で起こった問題にアドバイザーが答えていくというドキュメンテーションタッチの番組です。これは、番組が募集する相談テーマにより相談者がテレビ局に応募し、テレビ局が番組で取り上げるかどうかを決めていくものです。このコラムでも、これらの人気番組からの人物を何人か紹介していきたいと思いますが、今回は『Raus aus dem Schuld. - 借金からの脱出』という番組とこの番組での借金問題専門家、というよりも借金問題解決請負人といった方がいいでしょうか、Peter Zwegat(ペーター・ツヴィーガート)氏に焦点を当てます。
ヨーロッパ、とりわけギリシャの破綻は世界中にその波紋を投げかけています。私の実生活では、ユーロの為替がどんどん下がっていくことなどが生活に影響を与えています。日本円で稼ぎを得ている友人の苦悶を聞きます。またドイツは過去移民をよく受け入れたので、あるギリシャ人の知人には、親戚の半分がギリシャに住んでいるという方もいました。保険金をきちんと支払っていた親戚が大病になってしまい手術の費用が必要なのに、国の財政が破綻してしまったために、保険会社が保険金を支払いできないという事態になってしまったということでした。そのため、ドイツにいるもう半分の親戚がユーロを集めて現金でギリシャに送金したなんて話を聞きました。こんなのは一つの話にすぎないのかもしれず、そしてまた同じようなお金に関する困ったことがヨーロッパ中で起こっていることでしょう。世界を揺るがすこの金融危機については今後も動向が気になる所ですが、このユーロ金融危機が起こる前に私はよくこの番組を見ていたので、このペーター・ツヴィーガートだったらギリシャ政府にどのようにアドバイスをしたのだろうとも思ったのです。
この番組は2007年から始まり、途中休憩が入るものの2012年の現在も続いています。今年62歳のペーター・ツヴィーガート氏。今ではお茶の間でも有名でパロディーなんかもでているくらいです。ドイツ人は倹約家という印象があると思いますが、そして私もそれは本当にそうだと思っていましたが、実際ツィーガート氏の番組を見るとドイツ人もいろいろなタイプがあるのだなと思わずにいられません。普段は家族やお友達同士でもお金のことはタブーとして話しづらいですが、アドバイスを受けたい方達はすでにお金で問題を抱えています。これらの人々の借金にメスを入れて、これが起こった訳、そしてその分析をし、解決の方法を探り、実際にアクションを起こしていくということをこのツィーガート氏は請け負います。お金のことをおおっぴらにし、それも全国放送になる訳ですから恥もなにも捨ててのぞまなければなりません。ちなみにツィーガート氏のアドバイスは無料で行われます。彼のお給料は、テレビ局と、勤め先である自治体から出ています。
普段、ツヴィーガート氏はベルリンに住み、東ベルリンの地区フリードリヒスハイン区の借金についてのアドバイザーとして働いています。公務というところでしょうか。ですのでこの公務とテレビの出演をここ数年両立させているといったことのようです。
ツヴィーガート氏は1950年東ベルリンのパンコウ生まれ。10歳の時に家族と共に西に夜逃げしたとあります。以後西ベルリンのシャルロッテンブルク区の同じ借家に住んでいるとのこと。役所の管理業務について勉強した後、1974年には社会教育学を大学で学び、1987年までソーシャルワーカーとして青年教育に関わっていたそうです。その後、西ベルリンの中でもかなり経済が破綻している人が多いクロイツベルク区、そして現在では前述にあるように、旧東ベルリンのフリードリヒスハイン区で借金についてのアドバイザーを勤めています。旧東区というのはドイツ統一後、急に西の貨幣価値感覚が入り西側のお金について無知であったために苦労している人が多いとのことです。彼の略歴からよく分かるのは、根っからのソーシャルワーカーであること、ドイツの歴史と自らの歴史が絡んでいるところもあるのですが、問題のあるところに常に行くというような人です。
番組では、さまざまな実例から借金に対しての対策、方法が視聴者に分かりやすく伝えられます。ツヴィーガート氏は、明晰な分析力と人脈、時にあまり感情を表に出さないクールな表情にもかかわらず、借金をしてしまった人へユーモアのある人情も分かる接し方をするのでとても人気があります。細身の体に、細面の顔、メガネに、ロマンスグレーの髪。いつも背広でネクタイ、皮の手提げ鞄をもっていて、寒い時には膝までのコートを着て登場です。たぶん彼自身がドイツの典型的なイメージ、倹約家にぴったりとあう人なのでしょう。
番組の宣伝も兼ねて相談者を応募するためのカットでは、まったく表情をくずさず、
『あなたは借金がありますか? それがもしかして雪だるま式に増えていて、もうどうにもならなくなってしまっていて、助けを求めているのであれば番組宛にお手紙をください。もしかしたらあなたのお部屋までうかがって、コーヒーを飲みながら書類に目を通していくことができるかもしれません。あ、もし必要だったらコーヒーはこちらから持参しますけれども。。』
という感じでおちゃめなことも言います。
▼こちらから、ツヴィーガート氏の動画が見られます
http://www.rtl.de/cms/sendungen/real-life/raus-aus-den-schulden/bewerbung.html
番組に採用された人にはツヴィーガート氏が来ることが知らされるのでしょうか。チャイムを鳴らし、ドアが開き、そして相手と握手をしながら、
『グーテンターク!(こんにちは!)ペーター・ツィーガートです。あなたの噂がベルリンまで届いたのでここまでやって来ました。なにかお手伝いできることはありますか?』
というお決まりのセリフで番組が始まります。さてこのつづきは次回。
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◆このコラムの他の記事を読む
(1)ドイツ版、国民的アイドルは誰ですの?
≫その1
≫その2
≫その3
(2)「借金からの脱出」借金解決請負人-ペーター・ツヴィーガート
≫その1
≫その2
≫その3
(3)ドイツの人気テレビ番組「ほんとうにほんとうの人生」
≫その1
≫その2
≫その3
(4)売れないレストラン再建!独TV番組「レストランテスター」
≫その1
≫その2
≫その3
(5)深夜のトーク番組「ドミアン」 ハロー、こちらドミアン!
≫その1
≫その2
≫その3
(6)黒髪長身のスーパー教育アドバイザーが家庭訪問。「スーパーナニー」
≫その1
≫その2
≫その3
(7)政治家シリーズ
≫「ドイツの母」フォン・デア・ライエン氏
≫「ドイツの右腕」ヴォルフガング・ショイブレ氏
≫「ドイツの首相」アンゲラ・メルケル氏
◆このコラムの著者、河村恵理さんのお話を、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
河村さんのドイツでのお仕事、現在に至るまでの経緯などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e953874.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e956661.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e960315.html
このRTLの番組はニュースからバラエティー、スポーツ番組といろいろとあるのですが、中でもこの局がお得意とするのが、実際の私生活や仕事上で起こった問題にアドバイザーが答えていくというドキュメンテーションタッチの番組です。これは、番組が募集する相談テーマにより相談者がテレビ局に応募し、テレビ局が番組で取り上げるかどうかを決めていくものです。このコラムでも、これらの人気番組からの人物を何人か紹介していきたいと思いますが、今回は『Raus aus dem Schuld. - 借金からの脱出』という番組とこの番組での借金問題専門家、というよりも借金問題解決請負人といった方がいいでしょうか、Peter Zwegat(ペーター・ツヴィーガート)氏に焦点を当てます。
ヨーロッパ、とりわけギリシャの破綻は世界中にその波紋を投げかけています。私の実生活では、ユーロの為替がどんどん下がっていくことなどが生活に影響を与えています。日本円で稼ぎを得ている友人の苦悶を聞きます。またドイツは過去移民をよく受け入れたので、あるギリシャ人の知人には、親戚の半分がギリシャに住んでいるという方もいました。保険金をきちんと支払っていた親戚が大病になってしまい手術の費用が必要なのに、国の財政が破綻してしまったために、保険会社が保険金を支払いできないという事態になってしまったということでした。そのため、ドイツにいるもう半分の親戚がユーロを集めて現金でギリシャに送金したなんて話を聞きました。こんなのは一つの話にすぎないのかもしれず、そしてまた同じようなお金に関する困ったことがヨーロッパ中で起こっていることでしょう。世界を揺るがすこの金融危機については今後も動向が気になる所ですが、このユーロ金融危機が起こる前に私はよくこの番組を見ていたので、このペーター・ツヴィーガートだったらギリシャ政府にどのようにアドバイスをしたのだろうとも思ったのです。
この番組は2007年から始まり、途中休憩が入るものの2012年の現在も続いています。今年62歳のペーター・ツヴィーガート氏。今ではお茶の間でも有名でパロディーなんかもでているくらいです。ドイツ人は倹約家という印象があると思いますが、そして私もそれは本当にそうだと思っていましたが、実際ツィーガート氏の番組を見るとドイツ人もいろいろなタイプがあるのだなと思わずにいられません。普段は家族やお友達同士でもお金のことはタブーとして話しづらいですが、アドバイスを受けたい方達はすでにお金で問題を抱えています。これらの人々の借金にメスを入れて、これが起こった訳、そしてその分析をし、解決の方法を探り、実際にアクションを起こしていくということをこのツィーガート氏は請け負います。お金のことをおおっぴらにし、それも全国放送になる訳ですから恥もなにも捨ててのぞまなければなりません。ちなみにツィーガート氏のアドバイスは無料で行われます。彼のお給料は、テレビ局と、勤め先である自治体から出ています。
普段、ツヴィーガート氏はベルリンに住み、東ベルリンの地区フリードリヒスハイン区の借金についてのアドバイザーとして働いています。公務というところでしょうか。ですのでこの公務とテレビの出演をここ数年両立させているといったことのようです。
ツヴィーガート氏は1950年東ベルリンのパンコウ生まれ。10歳の時に家族と共に西に夜逃げしたとあります。以後西ベルリンのシャルロッテンブルク区の同じ借家に住んでいるとのこと。役所の管理業務について勉強した後、1974年には社会教育学を大学で学び、1987年までソーシャルワーカーとして青年教育に関わっていたそうです。その後、西ベルリンの中でもかなり経済が破綻している人が多いクロイツベルク区、そして現在では前述にあるように、旧東ベルリンのフリードリヒスハイン区で借金についてのアドバイザーを勤めています。旧東区というのはドイツ統一後、急に西の貨幣価値感覚が入り西側のお金について無知であったために苦労している人が多いとのことです。彼の略歴からよく分かるのは、根っからのソーシャルワーカーであること、ドイツの歴史と自らの歴史が絡んでいるところもあるのですが、問題のあるところに常に行くというような人です。
番組では、さまざまな実例から借金に対しての対策、方法が視聴者に分かりやすく伝えられます。ツヴィーガート氏は、明晰な分析力と人脈、時にあまり感情を表に出さないクールな表情にもかかわらず、借金をしてしまった人へユーモアのある人情も分かる接し方をするのでとても人気があります。細身の体に、細面の顔、メガネに、ロマンスグレーの髪。いつも背広でネクタイ、皮の手提げ鞄をもっていて、寒い時には膝までのコートを着て登場です。たぶん彼自身がドイツの典型的なイメージ、倹約家にぴったりとあう人なのでしょう。
番組の宣伝も兼ねて相談者を応募するためのカットでは、まったく表情をくずさず、
『あなたは借金がありますか? それがもしかして雪だるま式に増えていて、もうどうにもならなくなってしまっていて、助けを求めているのであれば番組宛にお手紙をください。もしかしたらあなたのお部屋までうかがって、コーヒーを飲みながら書類に目を通していくことができるかもしれません。あ、もし必要だったらコーヒーはこちらから持参しますけれども。。』
という感じでおちゃめなことも言います。
▼こちらから、ツヴィーガート氏の動画が見られます
http://www.rtl.de/cms/sendungen/real-life/raus-aus-den-schulden/bewerbung.html
番組に採用された人にはツヴィーガート氏が来ることが知らされるのでしょうか。チャイムを鳴らし、ドアが開き、そして相手と握手をしながら、
『グーテンターク!(こんにちは!)ペーター・ツィーガートです。あなたの噂がベルリンまで届いたのでここまでやって来ました。なにかお手伝いできることはありますか?』
というお決まりのセリフで番組が始まります。さてこのつづきは次回。
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(7)政治家シリーズ
≫「ドイツの母」フォン・デア・ライエン氏
≫「ドイツの右腕」ヴォルフガング・ショイブレ氏
≫「ドイツの首相」アンゲラ・メルケル氏
◆このコラムの著者、河村恵理さんのお話を、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
河村さんのドイツでのお仕事、現在に至るまでの経緯などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e953874.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e956661.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e960315.html
Posted by eしずおかコラム at 12:00