2012年09月26日
5.「借金からの脱出」借金解決請負人-ペーター・ツヴィーガート2
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さて、ドイツの人気テレビ番組「借金からの脱出」。今回、ペーター・ツヴィーガート氏は、どんな難題を解決しようというのでしょうか。以下の事例は、2011年9月14日に放送されたハンブルク近郊に住む、夫・ヨアキム(54)、妻・ ドーリス(52)夫妻の場合です。
『グーテンターク!(こんにちは!)ペーター・ツヴィーガートです。あなたの噂がベルリンまで届いたのでここまでやって来ました。なにかお手伝いできることはありますか?』
ツヴィーガート氏は、夫妻の住んでいる居間でコーヒーを飲みながら、彼らが番組に応募してくれた経緯を聞いていきます。
夫妻が結婚したのは6年前だが、さかのぼること35年前、実はヨアキム(当時16)とドーリス(当時14)は初恋の人同士であった。お互いに1度別の人と結婚、その後離婚を経て現在にいたる。
ヨアキムは、以前はユーゴスラビア人の女性と結婚していた。彼女の祖国は戦渦にあったため帰郷することが許されず、彼女はヨアキムに、高い服や車にいたるまで贅沢をせびるようになる。ヨアキムは節度を超えたこれらの要求に応えるがこの結婚が破綻。
ドーリスもやはり別の男性と結婚したが、一児をもうけた後、夫の暴力で離婚。それぞれの離婚後、彼らはお互いを再び見つけた。
ヨアキムは長距離トラックの運転手として平日、月曜から金曜まで常に路上で走っており家をあける。ドーリスは以前は医者の助手として働きに出ていたが、2009年に肺がんを患ったため仕事をやめて、今は保険金を貰っている。
さて、ヨアキムは最初の結婚時から借金を抱えていた。さらに現在の結婚生活において、憩いの場として家を購入し、それを改修し、さらに新車を買うなどした結果多額の借金を負うことになった。そこで、ペーター・ツヴィーガート氏へ助けを求めたという。
まず、ツヴィーガート氏が彼らの未払いの請求書や、銀行との間で取り決められた借用契約書、そしてあらゆるお金の出し入れに関しての書類をベルリンの事務所にもっていき自ら調査と分析をしていく。
次のミーティングでは彼はどのくらいこの二人に借金があるのか、二人を前にして設置された模造紙に書き出す。このリストアップをする事でお金に関する事情、つまり借金の総額、返却の見込みなどが一目瞭然になる。
二人には、ヨアキムの前妻との関係で作られた借金、今の夫婦のために買った家、新しく買った車、ドーリスが肺がんを克服したときに記念としてキッチンを改装した費用などを総計すると総額、185,000ユーロ(約1900万円)の借金があるという計算に。
これを聞いたヨアキムは「いつまで働けばいいのだ」と頭をかかえる。
一方、月々の収入はというと、ヨアキムの給料が月々2,200ユーロ、ドーリスの保険金が月々300ユーロということで、合計2,500ユーロ。
これから生活費を引き算すると、家のクレジットに月々700ユーロ払うのがトップで、車のクレジット、食費、光熱費、保険金などもろもろを引いていくと、2,704ユーロの出費。
収入の2,500ユーロから支出の2,704ユーロを引くと・・・204ユーロの赤字。
これでは、返そうと思っても借金が増えて行くだけだ。現在の問題は、ドーリスが肺の摘出手術をしたので働きたくても働けないこと。障害者手帖を持っているものの年金の早期受給申請は断られてしまい、彼女の収入が増えるのは望めない。このままでは、担保とないっている二人の家が没収されることが危惧されていた。
そこで、ペーター・ツヴィーガート氏は動く。
早期年金の受給がどうしてできなかったのか、役所の担当者と実際に会ってそれを問いただすと、
「障害者手帖を持っているということイコール働けないこと、とは見なせない」という答え。一理はあるのでここは引き下がる。
では、働けないことをどのように証明しようかと考えあぐねているうちにドーリスに別のがんの疑いが出て、検査入院となった。
もしまたガンにおかされているならば入院しなければならず、保険からおりる現金収入も減ってしまう。病気の疑いがかけられたことで本人たちにとっては借金のことよりも、もっと大きな問題、生か死かの問題に直面してしまった。ペーター・ツヴィーガート氏は生か死かの問題も考慮しつつ、しかし行動せねば彼に課せられた課題解決の糸口を見つけるべく、行動にあけくれた。
まず、ドーリスの更なる検査入院という事実をもって、早期年金受給をお願いに。また彼らがお金を借りた銀行と話をし、月額に返さなければならない額を減額してもらうことに成功。
ドーリスは検査入院の結果、幸いにも良性という結果が出て、がんでない事がわかった。これでまずは一安心。
さて、ペーター・ツヴィーガート氏の最後の訪問日には今まで彼が動いて来た成果と今後の課題が発表された。
ドーリスは早期年金受給を受け、月々650ユーロを受けれ取る事に。銀行への月々の支払いの減額も交渉し、順調に進めば2015年には新車の借金を返済し終え、2019年には家の改装代の借金が、そして2040年には、ヨアキム83歳、ドーリス81歳で家の借金がなくなるという計算を打ち立てた。
ドーリスががんではなかったという嬉しい報告を聞いて、ツヴィーガート氏は、「今までは病気のことがあったので言えなかったが、そして今もこのことを言うのは酷だろうけれども・・・」という前置きをして、家の借金があるのにもかかわらず、すぐに新車やキッチンの改装をしてしまうのは理解できかねると、ぴしゃり。
たぶん彼らとしてはほんの少しの贅沢だったかもしれないが、これがあとから痛い思いになるとは予期しなかったに違いない。
今後はこのような贅沢はできないが、家を失うようなことはなくなるだろうとして、これから始まる彼らの倹約生活を応援して番組はおわる。
・・・というのが一例。
これまでペーター・ツヴィーガート氏は番組内で約100例ほど、借金で苦しんでいる人たちのお助けマンとして活躍しています。
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≫「ドイツの母」フォン・デア・ライエン氏
≫「ドイツの右腕」ヴォルフガング・ショイブレ氏
≫「ドイツの首相」アンゲラ・メルケル氏
◆このコラムの著者、河村恵理さんのお話を、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
河村さんのドイツでのお仕事、現在に至るまでの経緯などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e953874.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e956661.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e960315.html
さて、ドイツの人気テレビ番組「借金からの脱出」。今回、ペーター・ツヴィーガート氏は、どんな難題を解決しようというのでしょうか。以下の事例は、2011年9月14日に放送されたハンブルク近郊に住む、夫・ヨアキム(54)、妻・ ドーリス(52)夫妻の場合です。
『グーテンターク!(こんにちは!)ペーター・ツヴィーガートです。あなたの噂がベルリンまで届いたのでここまでやって来ました。なにかお手伝いできることはありますか?』
ツヴィーガート氏は、夫妻の住んでいる居間でコーヒーを飲みながら、彼らが番組に応募してくれた経緯を聞いていきます。
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夫妻が結婚したのは6年前だが、さかのぼること35年前、実はヨアキム(当時16)とドーリス(当時14)は初恋の人同士であった。お互いに1度別の人と結婚、その後離婚を経て現在にいたる。
ヨアキムは、以前はユーゴスラビア人の女性と結婚していた。彼女の祖国は戦渦にあったため帰郷することが許されず、彼女はヨアキムに、高い服や車にいたるまで贅沢をせびるようになる。ヨアキムは節度を超えたこれらの要求に応えるがこの結婚が破綻。
ドーリスもやはり別の男性と結婚したが、一児をもうけた後、夫の暴力で離婚。それぞれの離婚後、彼らはお互いを再び見つけた。
ヨアキムは長距離トラックの運転手として平日、月曜から金曜まで常に路上で走っており家をあける。ドーリスは以前は医者の助手として働きに出ていたが、2009年に肺がんを患ったため仕事をやめて、今は保険金を貰っている。
さて、ヨアキムは最初の結婚時から借金を抱えていた。さらに現在の結婚生活において、憩いの場として家を購入し、それを改修し、さらに新車を買うなどした結果多額の借金を負うことになった。そこで、ペーター・ツヴィーガート氏へ助けを求めたという。
まず、ツヴィーガート氏が彼らの未払いの請求書や、銀行との間で取り決められた借用契約書、そしてあらゆるお金の出し入れに関しての書類をベルリンの事務所にもっていき自ら調査と分析をしていく。
次のミーティングでは彼はどのくらいこの二人に借金があるのか、二人を前にして設置された模造紙に書き出す。このリストアップをする事でお金に関する事情、つまり借金の総額、返却の見込みなどが一目瞭然になる。
二人には、ヨアキムの前妻との関係で作られた借金、今の夫婦のために買った家、新しく買った車、ドーリスが肺がんを克服したときに記念としてキッチンを改装した費用などを総計すると総額、185,000ユーロ(約1900万円)の借金があるという計算に。
これを聞いたヨアキムは「いつまで働けばいいのだ」と頭をかかえる。
一方、月々の収入はというと、ヨアキムの給料が月々2,200ユーロ、ドーリスの保険金が月々300ユーロということで、合計2,500ユーロ。
これから生活費を引き算すると、家のクレジットに月々700ユーロ払うのがトップで、車のクレジット、食費、光熱費、保険金などもろもろを引いていくと、2,704ユーロの出費。
収入の2,500ユーロから支出の2,704ユーロを引くと・・・204ユーロの赤字。
これでは、返そうと思っても借金が増えて行くだけだ。現在の問題は、ドーリスが肺の摘出手術をしたので働きたくても働けないこと。障害者手帖を持っているものの年金の早期受給申請は断られてしまい、彼女の収入が増えるのは望めない。このままでは、担保とないっている二人の家が没収されることが危惧されていた。
そこで、ペーター・ツヴィーガート氏は動く。
早期年金の受給がどうしてできなかったのか、役所の担当者と実際に会ってそれを問いただすと、
「障害者手帖を持っているということイコール働けないこと、とは見なせない」という答え。一理はあるのでここは引き下がる。
では、働けないことをどのように証明しようかと考えあぐねているうちにドーリスに別のがんの疑いが出て、検査入院となった。
もしまたガンにおかされているならば入院しなければならず、保険からおりる現金収入も減ってしまう。病気の疑いがかけられたことで本人たちにとっては借金のことよりも、もっと大きな問題、生か死かの問題に直面してしまった。ペーター・ツヴィーガート氏は生か死かの問題も考慮しつつ、しかし行動せねば彼に課せられた課題解決の糸口を見つけるべく、行動にあけくれた。
まず、ドーリスの更なる検査入院という事実をもって、早期年金受給をお願いに。また彼らがお金を借りた銀行と話をし、月額に返さなければならない額を減額してもらうことに成功。
ドーリスは検査入院の結果、幸いにも良性という結果が出て、がんでない事がわかった。これでまずは一安心。
さて、ペーター・ツヴィーガート氏の最後の訪問日には今まで彼が動いて来た成果と今後の課題が発表された。
ドーリスは早期年金受給を受け、月々650ユーロを受けれ取る事に。銀行への月々の支払いの減額も交渉し、順調に進めば2015年には新車の借金を返済し終え、2019年には家の改装代の借金が、そして2040年には、ヨアキム83歳、ドーリス81歳で家の借金がなくなるという計算を打ち立てた。
ドーリスががんではなかったという嬉しい報告を聞いて、ツヴィーガート氏は、「今までは病気のことがあったので言えなかったが、そして今もこのことを言うのは酷だろうけれども・・・」という前置きをして、家の借金があるのにもかかわらず、すぐに新車やキッチンの改装をしてしまうのは理解できかねると、ぴしゃり。
たぶん彼らとしてはほんの少しの贅沢だったかもしれないが、これがあとから痛い思いになるとは予期しなかったに違いない。
今後はこのような贅沢はできないが、家を失うようなことはなくなるだろうとして、これから始まる彼らの倹約生活を応援して番組はおわる。
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・・・というのが一例。
これまでペーター・ツヴィーガート氏は番組内で約100例ほど、借金で苦しんでいる人たちのお助けマンとして活躍しています。
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◆このコラムの著者、河村恵理さんのお話を、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
河村さんのドイツでのお仕事、現在に至るまでの経緯などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e953874.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e956661.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e960315.html
Posted by eしずおかコラム at 12:00