2013年05月22日
19. 黒髪長身のスーパー教育アドバイザーが家庭訪問。「スーパーナニー」その3
◆この前の回を読む
「スーパーナニー」1
≫「スーパーナニー」2
前回のコラム同様、今回もベルリンの家族のことについてです。
思春期にあたる子供がいる家族ということで難しい例ではありましたが、カティアが行ったワークショップ的な要素がこの家族をよくしていきます。
ベルリン、パンコー区に住む、ヴァンクミュラー家。母親とその実母、夫、子供3人と同居。夫とは3年前に再婚しており、子供たちにとっては義父にあたります。
母親 マリオン 48歳
父親 アンドレアス 51歳
長女 シャリーナ 19歳
長男 パトリック 14歳
次女 アリーン 13歳
祖母(母親の実母) グリット 病気のために部屋にこもりがちで一緒に生活しているという感じではない。
リビングルームに集う家族。テレビを見ながら、母親と父親はタバコを吸い続ける。子供達に話しかけるというより、口を開けると同時に叱責や罵りが出るような家族。14歳の長男パトリックは、この家でのけ者のような存在。学校にも行かず、自分の部屋でもタバコを吸う始末。タバコを吸う事については、親は黙認状態。母親と父親が一体になって、パトリックに「バカ」「おまえは何も出来ない」などと罵りの言葉をかけている。次に標的になっているのが長女のシャリーナ。彼女は3年前から失業中で家にいる。
カティアが家庭に入る前、それぞれにインタビューしてみたところ・・・。
シャリーナ「私は、親から大人として敬意を払われていない。子供としてだけ。人として容認されてないような気がする」
パトリック 「誉められた事がないし、抱かれたこともないよ。叩かれることは日常で。いつもひとりっていう感じだし、一度も理解されないし、容認されてないね」
末っ子のアリーンは甘え上手でいつもパパとママのお気に入り。だっこされたり、抱かれたり、撫でられたり上手。
「ママのいうことさえ聞いてればいいのよ。お兄さんやお姉さんみたいなバカなことしないで」。上の二人がなぶられているのを見て、いい子を演じきっている。
父アンドレアス 「パトリックを愛せるかもしれないけれど、自分の中に彼の事を拒否するような感じはあるよね」
母マリオン 「子供と生活をしていても、子供にただ尽くすだけ。『ママ愛してるよ』っていう言葉もない。いくら尽くしてもそんな言葉が帰ってこないのはとても辛いですよ。シャリーナは早く家から出て行って、自分の人生を築かないと」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、カティアが登場し、この家族の中に入って行きます。
「カティアです。どうぞよろしく。まずは皆さんの生活の様子をみさせていただきますね。私の姿はないと思って、普通に生活してみて」
いつもと同じように、リビングルームに集って、テレビを見る家族。マリオン、アンドレアス、パトリック、シャリーナ、アリーン、テレビを見ながら会話はない。マリオンとアンドレアスはタバコを吸っている。シャリーンはテレビの前でごろんと横になり行儀が悪く、14歳のパトリックはおもむろにタバコを出して吸い始めた。両親はパトリックの行動を目の当たりにしても何も言わない。
両親が黙認という状態にカティアは驚き、視聴者にむかって小声でこう言います。「いま家に入っただけで、かなりこの家庭の状況が分かります。両親達は子供がこのくらいひどいというのをわざと見せてるような気さえします」
マリオン 「どうせ家の外や、学校かどこかで吸うんだったら、家で吸った方がいいでしょ。その方がフラストレーションも溜まらないだろうし」
アンドレアス 「そうだよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
シャリーナは失業中だということですが、やる気がおこってないのは分かります。
マリオン 「仕事を探して応募したらどうなの」
シャリーナ 「あとでやるよ」
マリオン 「あとでやるって、いつやるの?」
シャリーナ 「今夜」
マリオン 「そう言って、いつもやらないじゃないの!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カティアがこの家に入って以来、気のきいた言葉や優しい言葉を聞いていません。
カティア 「パトリックがとてもかわいそうだと思いますよ。パトリックは一人にされているし、彼にかけられる言葉はいつも気持ちのいいものではありません。つねに攻撃を受けている感じ。言葉の暴力があるのであれば、体と体が接する暴力もあるにちがいありません」
アンドレアス 「19時になったからもう寝る時間だよ。部屋にいって寝なさい」
パトリック 「いやだよ」
アンドレアス 「学生だからもう寝なきゃ。行きなさい!」
パトリック 「いやだよ!」
マリオン 「行きなさい! 言うことを聞きなさい!」
パトリックの頭をもって彼の体を移動させる母・マリオンは怒りの形相です。
ここでカティアは「ちょっと待って、そこまでする事ないでしょう!」と止めにはいります。
カティア 「うるさくしてはいけないのは分かるけれど、19時にベッドに行かなければならないのは、もう14歳なんだから罰として理解されるわよね」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
1日目の視察が終わり、翌日、両親とまず最初の真面目な面接を迎えます。
カティアが開口一番に言ったのはパトリックの喫煙について。両親がリビングで吸う事を認めているのは信じられないとして、これでは親の責任がどこにあるか分からないとします。とにかく、昨日見た光景は、両親が二人で組んで子供をいじめているとしか思えない。家庭の中での、子供に対する、拒絶、卑下、暴言。
カティア 「言葉での暴力や体罰が、どうして起こるのですか?」
マリオン 「とにかく父親(継父)に対してあまりよい態度を示さないので、それに対して怒りがあります。」
カティア:
「でもパトリックはあなたの子供ですよね。特にパトリックが悪いくじを引いてますよね。その次はシャリーナ。パトリックに対しての気持ちはどこにいっちゃったのですか?
マリオン:
「自分の気持ちを表すとパトリックが痣家笑うので、それが怖いんですよ」
カティア 「パトリックに根源があると考えてはいけませんよ。それにシャリーナは仕事を探そうとしていますよね。彼女は自分で自分の人生を立ち上げなければならないのに、家庭の中で母親から『あなたは最低で、何もできなくて、ただ家で寝転がっているだけで、なまけもので、なにもならない子ね』と常に言われていれば、まったくモチベーションが湧かないのは当然ですよね」
マリオン 「そうですよね。自分が暴力的になっていたら、返ってくるものも同じようなものになってしまいますよね」
一方、父アンドレアスは違う見方をしているようです。
アンドレアス 「パトリックが自分を嘲笑うんだ。自分は彼に尊敬されてないと思うよ」
カティア: 「これまでのようにあなたらから暴言を吐くような態度であれば、尊敬はされにくいでしょうね。パトリックに行動を起こさせようと思って何かを言っても、彼がやらないことがほとんど。だからあなたは、パトリックが自分のことを好きではなく嫌っていると、極論を言えばパトリックから愛されてないと思うわけですね」
アンドレアス 「そう。彼は自分に対抗していると思うよ」
カティア 「それはまったくの誤解だと思いますよ」
マリオンとアンドレアス 「・・・・・・」
カティア 「パトリックはこの家にいる価値がないと思っているのですよ。毎日、彼のことをなじる言葉、彼はなにもできなくていないのも同然、あんたのやる事はいつも最低など、彼のことをいじる言葉を聞いていればそう思うしかないですよね。彼はこのような環境では人として育たないですよ。これから、どうしてあなた達お二人がこの小さな子供に当るのかその原因を突き止めなければなりません」
マリオン 「私は、自分の母親から叩かれたことが何度もあります。嫌がっているのに引っ張られたり、暴力的な環境で育ちました。それが自分の子供に対しても影響しているのかもしれません」
カティア 「この家庭でどのくらい子供の価値を認めるか、それにかかっていると思います。それぞれが敬意を表し、両親として、あるいは子供として認め合っていけるかどうか」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そいれは家族での共通体験を通して成り立っていくものであるとカティアは分析します。次に、カティアが家族の中に入ってアドバイスをしています。
またいつものようにみんなで無言でテレビに向かっていると、カティアが「今日はテレビを消して他のことをしてみましょうか」と言いました。
ソファーから皆を立たせ、キッチンに座って夕食となりました。皆、普段からしゃべっていないので、テレビがない空間でなにを話せばいいかわかりません。それでも子供達は後片付けも一緒にしたりして、実は協力的な家族だということが分かります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カティアがパトリックに、「話があるのだけれど、二人だけで話せないかしら」と連れ出します。
カティア 「何を一番変えたいと思う?」
パトリック 「親が自分に当たらないようになればいいなと思って。まだ母親と義父が一緒になる前は、よく母さんと自分の問題について話し合ったよ。だけれど、結婚してからそれが全くなくなってしまったよ」
カティア 「それから、この家族の中で全然話し相手がいないの?」
パトリック「そうだよ。」
カティア 「それからもう一つ私はあなたの母親じゃないけど、言わせてもらうけれど。タバコを吸っているじゃない」
パトリック 「はい」
カティア 「それはあなたの年でとても健康に悪いからやめてほしいの。あなたは14歳で親の保護のもと、といっても今しっかりした状態じゃないけれど、親の保護のもとにいるわけだから。それに私があなたに吸ってほしくないの」
カティアはパトリックの気持ちに訴えます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
自分たちの行動を客観的に見てもらうために、カティアはアンドレアスとマリオンにいままでの家族の様子の映像を見せます。ふたりのアグレッシブな態度がいかにパトリックに向かっているかを分かってもらうために。
アンドレアス・マリオン
「ヘイ、パトリック、分かったか!分からないのなら叩くぞ」
「パトリック、バカだな」
「パトリックごみだせよ」
「もう一度嘲笑ったらただじゃおかないよ」
ビデオを見終わった二人。マリオンは自分のことを「モンスターみたいだ」と、アンドレアスは「もう少し落ち着かないとね」と。
カティア 「アンドレアスは根本的に自分の中に怒りがあるようだけれど、どう?」
アンドレアス 「この家ではいろんなことが起こるから、まず自分を守らなきゃならないと思うよ」
カティア 「あなたたちがパトリックを追いつめている時、二人が一体化しているような気持ちがあるのだと思います」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
家族のみんながパトリックをあまり重要視していないと分かることの一つに、彼の部屋があまりにも簡素で飾り気がないということがあります。カティアが、これをみんなでどうにか掃除し、住みやすく飾り立てていきます。
その時に、「パトリック、これはなに?」とカティアがあるものを差します。
みると、自分の部屋で隠れてタバコを吸っていた様子です。灰皿にある吸い殻でわかってしまいました。
カティア 「パトリック、あれほど言ったのに。あなたの健康によくないって」。そしてマリオンに対して、「親としての責任をもっと持ってください」と
部屋の掃除を終えて、パトリックはお礼の気持ちをこめて家族みんなにハグをしました。義父のアンドレアスにも。みんなでハグをするなんて、こんなことは今までになかった現象です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、3年間失業中のシャリーナ。彼女からもなにかを聞き出そうと思い、カティアは彼女一人を外に連れ出します。
カティア 「シャリーナ、失業中だというけれど、仕事を探してない理由は他にあるんじゃないのかしら。あなたはお母さんがとっても好きで、仕事を見つけて家から出て行くっていうことを実はしたくないんじゃないの?」
シャリーナ 「そ、そうね」
いきなり、真意をつかれて、彼女はどぎまぎしているよう。
カティア 「お母さんが、あなたがうまくいってなくて落ち込んでいるということを知っている?」
シャリーナ 「たぶん分かってないと思う」
カティア 「そのことをお母さんと一度話すべきよ。あなたは19歳でとても素敵な年頃の娘さんなのに、いつも家のリビングルームにいるっていうのはもったいないもの」
カティアはシャリーナに、一度母親と真剣に話をして彼女が自立する道を見つけていくようすすめました。
リビングルームに戻り、シャリーナとマリオンがテレビの前にいるところにカティアが現れ、「今から試してみたいことがあるの」。
カティア 「ロールプレイゲームみたいのなのだけれど。いつも貴方達がやっていることを交換してみるということ」
マリオンが娘役、シャリーナが母親役になって始めます。
カティア 「じゃあまず、朝起こされるところからやってみましょう」
シャリーナ(母親役) 「起きなさい!!」
マリオン(娘役) 「5時に家にかえってきたから眠いよ!!」
シャリーナ 「いいから起きなさい!!起きろってば!」
そう言いながら掛け布団をはぎとり、ベットから体を引きずり下ろそうとする。
このプレイを何回もやり、二人とも汗をかいてでどちらが大変だろうかと問いただすと。マリオンは「断然に娘役だわね。」と。娘の立場を分かった状態で、カティアがシャリーナの気持ちを代弁する。
カティア 「シャリーナは、彼女が自立してこの家を出て行ったら、永遠に母親を失うと思っているのですよ」
マリオン 「そんなことないですよ。彼女は私を失う事なんかしないですよ。おそらく娘に対して間違った表現を使っていたのでしょうね。家から出て仕事を見つけてというのは母親の立場からはなにか達成してほしかったからで、でも娘には娘を嫌いになったから家を出て行けととらえられたのでしょうね。ごめんなさい。いろいろ傷つけてしまって」
視聴者にむかってカティア 「娘と母親のこの正直な会話は、娘の自立にとって大変重要なことだったと思います。娘は家を出る事で自分の家族に対する居場所がなくなると思っていたので、安心感を与え自分の人生を出発させること、ここが大事だったと思います」
娘の職さがしを母親が一緒にみることで母親のサポートを得、シャリーナは仕事を探し始めることに。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
この家族の中で一番欠けているのは、家族の中で会話をするということ。以前キッチンで夕食を共にしたとき、なにをしゃべっていいかわからない家族でしたが、これらの状況を抜け出すためにもう一度5人全員に集ってもらいました。
カティアが4枚のカードを渡し、みなに一つのカードにはそれぞれの人の良い所を書いてもらうことに。それぞれ順調に書き終わった様子ですが、義父、アンドレアスをみると、全く考えられないといった調子で紙が空欄のまま。何もかけないアンドレアスを見てカティアは彼一人だけ呼び出します。
カティア 「どうしたのですか。なにも思いつかない?特別に大きなことでなくてよいから、小さなところでも。なにか思いつくことはないの?」
アンドレアス 「今のところいっぱいいっぱいで、頭がまわらないよ。皆を愛しているけれど、なにか良い所を書けといわれても書くものが見つからないよ。とにかく自分は子供達に対しては一歩引いたところにいたから。ポジティブなことなんか考えたことないよ」
カティア 「なるほど。あなたがなにか家族についてとても戸惑う事があるということがあるということがわかったわ。もう少しこの問題について突っ込んだ方がいいと思うけれど、今はどうにか頭をしぼってでもカードにみんなの良い所と思うところを書いて席にもどって。席に戻る時にカードが白紙のままだったら、パパはなにも思いつかないんだとみんなが思ってしまって尊敬の念も湧いてもこないから。とにかく、書いて席について」
カティアはアンドレアスが子供達についてよい面を書くのをそばで手伝い、彼にどうにか文章を書いてもらいます。さて、みんなのカードがでそろったところで、それぞれがそれぞれの良い所を書いたものを声に出していきます。
アンドレアスは子供達に対して
「シャリーナは料理が上手なところ、アリーンは甘え上手なところ、パトリックは学校にいくきっかけを新しくつくったところを誇りに思うよ」
それぞれの子供達が義父について
シャリーナ 「パパとしてどうにかこの家族をしていかなきゃならないと思っているところ」
パトリック 「お母さんをとても支えているのがいいと思うよ」
アンドレアス 「子供達がそんなに自分のことをポジティブに見てるなんて知らなかったからびっくりした。この感謝の気持ちを子供達に返したいよ」
マリオンは子供達からなにも思われてないとうことに不満をもらしていましたが、実際子供達が書いたマリオンについてのいいところは?
パトリック 「よく話を聞いてくれるし、シャリーナと喧嘩をすると間にはいってくれるよ」
シャリーナ 「家事を全部一人でこなしているのはすごいと思う」
マリオン 「子供達がそんなことを思っていたなんて。みんな見てないと思っていたし、自分のやっていることに価値を見出してないと思っていたから、聞けてよかった。幸せです。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、カティアはもう一度、アンドレアスを一人呼びます。家族の中で戸惑うことが多いアンドレアス。父親として構えるつもりが、厳しくすることで父親としての役割を成立させようとしている彼。厳しくしようと思い、子供を傷つける態度をしてしまい、子供がそれに反応してまた義父を傷つけるという悪循環をどうにかしようとします。
アンドレアス 「よい子に育ってもらいたいから、厳しく育てたつもりなのだけれど、今はどうしていいかわからないよ」
カティア 「もし私にこれからどうしていったらいいか聞くのであれば、それはあまり強要しないことですね。彼に提案するという態度が一番ですよ。彼から来させるというのが一番」
アンドレアス 「じゃあ、今パトリックのところに行って、もう罰を与えないからとはっきり言って、もし彼が間違ったことをしたら、どうすれば正しくできるか見せたらいいかな」
カティア 「そうね。子供達はその行動をするにはなにか理由があるからやっているというのがあるから、その根本理由を探り出してお互いに考えるべきね。頭ごなしに罰を与えるというのは、子供を自動的に小さくして、卑下することにもなるから。それで親を大きくする。これでは根本の解決にはならないわね」
アンドレアスはようやく自分のやることが分かったようで、義父とパトリックとの確執について、素直に認め、パトリックに今までのことを誤り、仲直りの証明としてパトリックと二人でアイス屋さんにいくことに。アイスを食べながら、義父はパトリックに今まで悪い事をしたのだけれどこれを許してやり直してもらえるかと問うと、パトリックは突然のことでびっくりするけれど、「いいよ。」と二つ返事で父親の事を許す事に。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
番組ではシャリーナの研修先を探し、面接に両親とともに行く所も。レストランのシェフは3年間研修する強い意志であるならここで働きながら研修するという条件のもと受け入れるかどうか吟味していく。
最後にはシェフから合格発表の電話がきて、家族が一丸となって喜び、シャリーナの新しい人生の一歩を一緒に祝い、シャリーナへは家族として援助していくという明白な言葉をお母さんからかけてもらい、彼女も家族も幸せそうです。特に母親の表情が番組始まる前と番組の終わり頃でははっきりと違いがあり、なにか目に力があるのが分かります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
劇的な変化をみせたヴァンクミュラー一家。カティアはそれぞれと個人的に話をしていき、皆が抱いている誤解を解いて、家族の構成員としての立ち位置をはっきりさせていきました。一緒に住みながら、それぞれの気持ちが分からないというのが、家族をバラバラにしていく要因のようです。
そんなカティアは4人の子持ちというのですから、彼女は教育士というよりは母としてもなかなかの子育てのプロに違いありません。
◆このコラムの他の記事を読む
(1)ドイツ版、国民的アイドルは誰ですの?

≫その1
≫その2
≫その3
(2)「借金からの脱出」借金解決請負人-ペーター・ツヴィーガート

≫その1
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(3)ドイツの人気テレビ番組「ほんとうにほんとうの人生」

≫その1
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(4)売れないレストラン再建!独TV番組「レストランテスター」
≫その1
≫その2
≫その3
(5)深夜のトーク番組「ドミアン」 ハロー、こちらドミアン!

≫その1
≫その2
≫その3
(6)黒髪長身のスーパー教育アドバイザーが家庭訪問。「スーパーナニー」

≫その1
≫その2
≫その3
(7)政治家シリーズ

≫「ドイツの母」フォン・デア・ライエン氏

≫「ドイツの右腕」ヴォルフガング・ショイブレ氏

≫「ドイツの首相」アンゲラ・メルケル氏
◆このコラムの著者、河村恵理さんのお話を、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
河村さんのドイツでのお仕事、現在に至るまでの経緯などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e953874.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e956661.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e960315.html
「スーパーナニー」1
≫「スーパーナニー」2
前回のコラム同様、今回もベルリンの家族のことについてです。
思春期にあたる子供がいる家族ということで難しい例ではありましたが、カティアが行ったワークショップ的な要素がこの家族をよくしていきます。
ベルリン、パンコー区に住む、ヴァンクミュラー家。母親とその実母、夫、子供3人と同居。夫とは3年前に再婚しており、子供たちにとっては義父にあたります。
母親 マリオン 48歳
父親 アンドレアス 51歳
長女 シャリーナ 19歳
長男 パトリック 14歳
次女 アリーン 13歳
祖母(母親の実母) グリット 病気のために部屋にこもりがちで一緒に生活しているという感じではない。
リビングルームに集う家族。テレビを見ながら、母親と父親はタバコを吸い続ける。子供達に話しかけるというより、口を開けると同時に叱責や罵りが出るような家族。14歳の長男パトリックは、この家でのけ者のような存在。学校にも行かず、自分の部屋でもタバコを吸う始末。タバコを吸う事については、親は黙認状態。母親と父親が一体になって、パトリックに「バカ」「おまえは何も出来ない」などと罵りの言葉をかけている。次に標的になっているのが長女のシャリーナ。彼女は3年前から失業中で家にいる。
カティアが家庭に入る前、それぞれにインタビューしてみたところ・・・。
シャリーナ「私は、親から大人として敬意を払われていない。子供としてだけ。人として容認されてないような気がする」
パトリック 「誉められた事がないし、抱かれたこともないよ。叩かれることは日常で。いつもひとりっていう感じだし、一度も理解されないし、容認されてないね」
末っ子のアリーンは甘え上手でいつもパパとママのお気に入り。だっこされたり、抱かれたり、撫でられたり上手。
「ママのいうことさえ聞いてればいいのよ。お兄さんやお姉さんみたいなバカなことしないで」。上の二人がなぶられているのを見て、いい子を演じきっている。
父アンドレアス 「パトリックを愛せるかもしれないけれど、自分の中に彼の事を拒否するような感じはあるよね」
母マリオン 「子供と生活をしていても、子供にただ尽くすだけ。『ママ愛してるよ』っていう言葉もない。いくら尽くしてもそんな言葉が帰ってこないのはとても辛いですよ。シャリーナは早く家から出て行って、自分の人生を築かないと」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、カティアが登場し、この家族の中に入って行きます。
「カティアです。どうぞよろしく。まずは皆さんの生活の様子をみさせていただきますね。私の姿はないと思って、普通に生活してみて」
いつもと同じように、リビングルームに集って、テレビを見る家族。マリオン、アンドレアス、パトリック、シャリーナ、アリーン、テレビを見ながら会話はない。マリオンとアンドレアスはタバコを吸っている。シャリーンはテレビの前でごろんと横になり行儀が悪く、14歳のパトリックはおもむろにタバコを出して吸い始めた。両親はパトリックの行動を目の当たりにしても何も言わない。
両親が黙認という状態にカティアは驚き、視聴者にむかって小声でこう言います。「いま家に入っただけで、かなりこの家庭の状況が分かります。両親達は子供がこのくらいひどいというのをわざと見せてるような気さえします」
マリオン 「どうせ家の外や、学校かどこかで吸うんだったら、家で吸った方がいいでしょ。その方がフラストレーションも溜まらないだろうし」
アンドレアス 「そうだよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
シャリーナは失業中だということですが、やる気がおこってないのは分かります。
マリオン 「仕事を探して応募したらどうなの」
シャリーナ 「あとでやるよ」
マリオン 「あとでやるって、いつやるの?」
シャリーナ 「今夜」
マリオン 「そう言って、いつもやらないじゃないの!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カティアがこの家に入って以来、気のきいた言葉や優しい言葉を聞いていません。
カティア 「パトリックがとてもかわいそうだと思いますよ。パトリックは一人にされているし、彼にかけられる言葉はいつも気持ちのいいものではありません。つねに攻撃を受けている感じ。言葉の暴力があるのであれば、体と体が接する暴力もあるにちがいありません」
アンドレアス 「19時になったからもう寝る時間だよ。部屋にいって寝なさい」
パトリック 「いやだよ」
アンドレアス 「学生だからもう寝なきゃ。行きなさい!」
パトリック 「いやだよ!」
マリオン 「行きなさい! 言うことを聞きなさい!」
パトリックの頭をもって彼の体を移動させる母・マリオンは怒りの形相です。
ここでカティアは「ちょっと待って、そこまでする事ないでしょう!」と止めにはいります。
カティア 「うるさくしてはいけないのは分かるけれど、19時にベッドに行かなければならないのは、もう14歳なんだから罰として理解されるわよね」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
1日目の視察が終わり、翌日、両親とまず最初の真面目な面接を迎えます。
カティアが開口一番に言ったのはパトリックの喫煙について。両親がリビングで吸う事を認めているのは信じられないとして、これでは親の責任がどこにあるか分からないとします。とにかく、昨日見た光景は、両親が二人で組んで子供をいじめているとしか思えない。家庭の中での、子供に対する、拒絶、卑下、暴言。
カティア 「言葉での暴力や体罰が、どうして起こるのですか?」
マリオン 「とにかく父親(継父)に対してあまりよい態度を示さないので、それに対して怒りがあります。」
カティア:
「でもパトリックはあなたの子供ですよね。特にパトリックが悪いくじを引いてますよね。その次はシャリーナ。パトリックに対しての気持ちはどこにいっちゃったのですか?
マリオン:
「自分の気持ちを表すとパトリックが痣家笑うので、それが怖いんですよ」
カティア 「パトリックに根源があると考えてはいけませんよ。それにシャリーナは仕事を探そうとしていますよね。彼女は自分で自分の人生を立ち上げなければならないのに、家庭の中で母親から『あなたは最低で、何もできなくて、ただ家で寝転がっているだけで、なまけもので、なにもならない子ね』と常に言われていれば、まったくモチベーションが湧かないのは当然ですよね」
マリオン 「そうですよね。自分が暴力的になっていたら、返ってくるものも同じようなものになってしまいますよね」
一方、父アンドレアスは違う見方をしているようです。
アンドレアス 「パトリックが自分を嘲笑うんだ。自分は彼に尊敬されてないと思うよ」
カティア: 「これまでのようにあなたらから暴言を吐くような態度であれば、尊敬はされにくいでしょうね。パトリックに行動を起こさせようと思って何かを言っても、彼がやらないことがほとんど。だからあなたは、パトリックが自分のことを好きではなく嫌っていると、極論を言えばパトリックから愛されてないと思うわけですね」
アンドレアス 「そう。彼は自分に対抗していると思うよ」
カティア 「それはまったくの誤解だと思いますよ」
マリオンとアンドレアス 「・・・・・・」
カティア 「パトリックはこの家にいる価値がないと思っているのですよ。毎日、彼のことをなじる言葉、彼はなにもできなくていないのも同然、あんたのやる事はいつも最低など、彼のことをいじる言葉を聞いていればそう思うしかないですよね。彼はこのような環境では人として育たないですよ。これから、どうしてあなた達お二人がこの小さな子供に当るのかその原因を突き止めなければなりません」
マリオン 「私は、自分の母親から叩かれたことが何度もあります。嫌がっているのに引っ張られたり、暴力的な環境で育ちました。それが自分の子供に対しても影響しているのかもしれません」
カティア 「この家庭でどのくらい子供の価値を認めるか、それにかかっていると思います。それぞれが敬意を表し、両親として、あるいは子供として認め合っていけるかどうか」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そいれは家族での共通体験を通して成り立っていくものであるとカティアは分析します。次に、カティアが家族の中に入ってアドバイスをしています。
またいつものようにみんなで無言でテレビに向かっていると、カティアが「今日はテレビを消して他のことをしてみましょうか」と言いました。
ソファーから皆を立たせ、キッチンに座って夕食となりました。皆、普段からしゃべっていないので、テレビがない空間でなにを話せばいいかわかりません。それでも子供達は後片付けも一緒にしたりして、実は協力的な家族だということが分かります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
カティアがパトリックに、「話があるのだけれど、二人だけで話せないかしら」と連れ出します。
カティア 「何を一番変えたいと思う?」
パトリック 「親が自分に当たらないようになればいいなと思って。まだ母親と義父が一緒になる前は、よく母さんと自分の問題について話し合ったよ。だけれど、結婚してからそれが全くなくなってしまったよ」
カティア 「それから、この家族の中で全然話し相手がいないの?」
パトリック「そうだよ。」
カティア 「それからもう一つ私はあなたの母親じゃないけど、言わせてもらうけれど。タバコを吸っているじゃない」
パトリック 「はい」
カティア 「それはあなたの年でとても健康に悪いからやめてほしいの。あなたは14歳で親の保護のもと、といっても今しっかりした状態じゃないけれど、親の保護のもとにいるわけだから。それに私があなたに吸ってほしくないの」
カティアはパトリックの気持ちに訴えます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
自分たちの行動を客観的に見てもらうために、カティアはアンドレアスとマリオンにいままでの家族の様子の映像を見せます。ふたりのアグレッシブな態度がいかにパトリックに向かっているかを分かってもらうために。
アンドレアス・マリオン
「ヘイ、パトリック、分かったか!分からないのなら叩くぞ」
「パトリック、バカだな」
「パトリックごみだせよ」
「もう一度嘲笑ったらただじゃおかないよ」
ビデオを見終わった二人。マリオンは自分のことを「モンスターみたいだ」と、アンドレアスは「もう少し落ち着かないとね」と。
カティア 「アンドレアスは根本的に自分の中に怒りがあるようだけれど、どう?」
アンドレアス 「この家ではいろんなことが起こるから、まず自分を守らなきゃならないと思うよ」
カティア 「あなたたちがパトリックを追いつめている時、二人が一体化しているような気持ちがあるのだと思います」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
家族のみんながパトリックをあまり重要視していないと分かることの一つに、彼の部屋があまりにも簡素で飾り気がないということがあります。カティアが、これをみんなでどうにか掃除し、住みやすく飾り立てていきます。
その時に、「パトリック、これはなに?」とカティアがあるものを差します。
みると、自分の部屋で隠れてタバコを吸っていた様子です。灰皿にある吸い殻でわかってしまいました。
カティア 「パトリック、あれほど言ったのに。あなたの健康によくないって」。そしてマリオンに対して、「親としての責任をもっと持ってください」と
部屋の掃除を終えて、パトリックはお礼の気持ちをこめて家族みんなにハグをしました。義父のアンドレアスにも。みんなでハグをするなんて、こんなことは今までになかった現象です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、3年間失業中のシャリーナ。彼女からもなにかを聞き出そうと思い、カティアは彼女一人を外に連れ出します。
カティア 「シャリーナ、失業中だというけれど、仕事を探してない理由は他にあるんじゃないのかしら。あなたはお母さんがとっても好きで、仕事を見つけて家から出て行くっていうことを実はしたくないんじゃないの?」
シャリーナ 「そ、そうね」
いきなり、真意をつかれて、彼女はどぎまぎしているよう。
カティア 「お母さんが、あなたがうまくいってなくて落ち込んでいるということを知っている?」
シャリーナ 「たぶん分かってないと思う」
カティア 「そのことをお母さんと一度話すべきよ。あなたは19歳でとても素敵な年頃の娘さんなのに、いつも家のリビングルームにいるっていうのはもったいないもの」
カティアはシャリーナに、一度母親と真剣に話をして彼女が自立する道を見つけていくようすすめました。
リビングルームに戻り、シャリーナとマリオンがテレビの前にいるところにカティアが現れ、「今から試してみたいことがあるの」。
カティア 「ロールプレイゲームみたいのなのだけれど。いつも貴方達がやっていることを交換してみるということ」
マリオンが娘役、シャリーナが母親役になって始めます。
カティア 「じゃあまず、朝起こされるところからやってみましょう」
シャリーナ(母親役) 「起きなさい!!」
マリオン(娘役) 「5時に家にかえってきたから眠いよ!!」
シャリーナ 「いいから起きなさい!!起きろってば!」
そう言いながら掛け布団をはぎとり、ベットから体を引きずり下ろそうとする。
このプレイを何回もやり、二人とも汗をかいてでどちらが大変だろうかと問いただすと。マリオンは「断然に娘役だわね。」と。娘の立場を分かった状態で、カティアがシャリーナの気持ちを代弁する。
カティア 「シャリーナは、彼女が自立してこの家を出て行ったら、永遠に母親を失うと思っているのですよ」
マリオン 「そんなことないですよ。彼女は私を失う事なんかしないですよ。おそらく娘に対して間違った表現を使っていたのでしょうね。家から出て仕事を見つけてというのは母親の立場からはなにか達成してほしかったからで、でも娘には娘を嫌いになったから家を出て行けととらえられたのでしょうね。ごめんなさい。いろいろ傷つけてしまって」
視聴者にむかってカティア 「娘と母親のこの正直な会話は、娘の自立にとって大変重要なことだったと思います。娘は家を出る事で自分の家族に対する居場所がなくなると思っていたので、安心感を与え自分の人生を出発させること、ここが大事だったと思います」
娘の職さがしを母親が一緒にみることで母親のサポートを得、シャリーナは仕事を探し始めることに。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
この家族の中で一番欠けているのは、家族の中で会話をするということ。以前キッチンで夕食を共にしたとき、なにをしゃべっていいかわからない家族でしたが、これらの状況を抜け出すためにもう一度5人全員に集ってもらいました。
カティアが4枚のカードを渡し、みなに一つのカードにはそれぞれの人の良い所を書いてもらうことに。それぞれ順調に書き終わった様子ですが、義父、アンドレアスをみると、全く考えられないといった調子で紙が空欄のまま。何もかけないアンドレアスを見てカティアは彼一人だけ呼び出します。
カティア 「どうしたのですか。なにも思いつかない?特別に大きなことでなくてよいから、小さなところでも。なにか思いつくことはないの?」
アンドレアス 「今のところいっぱいいっぱいで、頭がまわらないよ。皆を愛しているけれど、なにか良い所を書けといわれても書くものが見つからないよ。とにかく自分は子供達に対しては一歩引いたところにいたから。ポジティブなことなんか考えたことないよ」
カティア 「なるほど。あなたがなにか家族についてとても戸惑う事があるということがあるということがわかったわ。もう少しこの問題について突っ込んだ方がいいと思うけれど、今はどうにか頭をしぼってでもカードにみんなの良い所と思うところを書いて席にもどって。席に戻る時にカードが白紙のままだったら、パパはなにも思いつかないんだとみんなが思ってしまって尊敬の念も湧いてもこないから。とにかく、書いて席について」
カティアはアンドレアスが子供達についてよい面を書くのをそばで手伝い、彼にどうにか文章を書いてもらいます。さて、みんなのカードがでそろったところで、それぞれがそれぞれの良い所を書いたものを声に出していきます。
アンドレアスは子供達に対して
「シャリーナは料理が上手なところ、アリーンは甘え上手なところ、パトリックは学校にいくきっかけを新しくつくったところを誇りに思うよ」
それぞれの子供達が義父について
シャリーナ 「パパとしてどうにかこの家族をしていかなきゃならないと思っているところ」
パトリック 「お母さんをとても支えているのがいいと思うよ」
アンドレアス 「子供達がそんなに自分のことをポジティブに見てるなんて知らなかったからびっくりした。この感謝の気持ちを子供達に返したいよ」
マリオンは子供達からなにも思われてないとうことに不満をもらしていましたが、実際子供達が書いたマリオンについてのいいところは?
パトリック 「よく話を聞いてくれるし、シャリーナと喧嘩をすると間にはいってくれるよ」
シャリーナ 「家事を全部一人でこなしているのはすごいと思う」
マリオン 「子供達がそんなことを思っていたなんて。みんな見てないと思っていたし、自分のやっていることに価値を見出してないと思っていたから、聞けてよかった。幸せです。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、カティアはもう一度、アンドレアスを一人呼びます。家族の中で戸惑うことが多いアンドレアス。父親として構えるつもりが、厳しくすることで父親としての役割を成立させようとしている彼。厳しくしようと思い、子供を傷つける態度をしてしまい、子供がそれに反応してまた義父を傷つけるという悪循環をどうにかしようとします。
アンドレアス 「よい子に育ってもらいたいから、厳しく育てたつもりなのだけれど、今はどうしていいかわからないよ」
カティア 「もし私にこれからどうしていったらいいか聞くのであれば、それはあまり強要しないことですね。彼に提案するという態度が一番ですよ。彼から来させるというのが一番」
アンドレアス 「じゃあ、今パトリックのところに行って、もう罰を与えないからとはっきり言って、もし彼が間違ったことをしたら、どうすれば正しくできるか見せたらいいかな」
カティア 「そうね。子供達はその行動をするにはなにか理由があるからやっているというのがあるから、その根本理由を探り出してお互いに考えるべきね。頭ごなしに罰を与えるというのは、子供を自動的に小さくして、卑下することにもなるから。それで親を大きくする。これでは根本の解決にはならないわね」
アンドレアスはようやく自分のやることが分かったようで、義父とパトリックとの確執について、素直に認め、パトリックに今までのことを誤り、仲直りの証明としてパトリックと二人でアイス屋さんにいくことに。アイスを食べながら、義父はパトリックに今まで悪い事をしたのだけれどこれを許してやり直してもらえるかと問うと、パトリックは突然のことでびっくりするけれど、「いいよ。」と二つ返事で父親の事を許す事に。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
番組ではシャリーナの研修先を探し、面接に両親とともに行く所も。レストランのシェフは3年間研修する強い意志であるならここで働きながら研修するという条件のもと受け入れるかどうか吟味していく。
最後にはシェフから合格発表の電話がきて、家族が一丸となって喜び、シャリーナの新しい人生の一歩を一緒に祝い、シャリーナへは家族として援助していくという明白な言葉をお母さんからかけてもらい、彼女も家族も幸せそうです。特に母親の表情が番組始まる前と番組の終わり頃でははっきりと違いがあり、なにか目に力があるのが分かります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
劇的な変化をみせたヴァンクミュラー一家。カティアはそれぞれと個人的に話をしていき、皆が抱いている誤解を解いて、家族の構成員としての立ち位置をはっきりさせていきました。一緒に住みながら、それぞれの気持ちが分からないというのが、家族をバラバラにしていく要因のようです。
そんなカティアは4人の子持ちというのですから、彼女は教育士というよりは母としてもなかなかの子育てのプロに違いありません。
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≫「ドイツの右腕」ヴォルフガング・ショイブレ氏

≫「ドイツの首相」アンゲラ・メルケル氏
◆このコラムの著者、河村恵理さんのお話を、コラム「インタビュー・ノート」にて掲載しています。
河村さんのドイツでのお仕事、現在に至るまでの経緯などが語られています。
・前編 http://interview.eshizuoka.jp/e953874.html
・中編 http://interview.eshizuoka.jp/e956661.html
・後編 http://interview.eshizuoka.jp/e960315.html
Posted by eしずおかコラム at 12:00